高血圧

血圧とは
高血圧について高血圧とは、血管にかかる圧力が慢性的に高い状態のことです。長期間続くと、心臓や血管に負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まります。
高血圧には 明確な原因がわからない「本態性高血圧」 と、腎臓病やホルモン異常などの病気が原因となる「二次性高血圧」 があります。

本態性高血圧(一次性高血圧)

明確な原因が特定されていない高血圧で、遺伝や生活習慣(塩分の過剰摂取、運動不足、ストレスなど)が関与すると考えられています。高血圧患者様の約80~90%がこのタイプです。

二次性高血圧

特定の疾患(腎臓病、ホルモン異常、睡眠時無呼吸症候群など)や薬の影響によって引き起こされる高血圧です。原因疾患を治療することで血圧が正常化する可能性があります。

主な原因

原因疾患 説明
腎実質性高血圧 慢性腎臓病などにより腎機能が低下し、血圧が上昇します。
腎血管性高血圧 腎動脈が狭窄し、腎臓が血圧を上げるホルモンを過剰に分泌するため血圧が上昇します。
原発性アルドステロン症 副腎の良性腫瘍や過形成が原因でアルドステロンというホルモンが過剰に分泌され血圧が上昇します。
褐色細胞腫 副腎などの腫瘍が原因でカテコラミン(アドレナリンなど)を過剰に分泌し、血圧が上昇します。
クッシング症候群 様々な原因で副腎皮質ホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されることで血圧が上昇します。
甲状腺機能異常 甲状腺ホルモンの異常により血圧が上昇します。
睡眠時無呼吸症候群 睡眠中の呼吸停止が交感神経を刺激し、血圧が上昇します。
薬剤誘発性高血圧 ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが原因で血圧が上昇します。

高血圧の基準

血圧は、医療機関で測定する「診察室血圧」と、自宅で測定する「家庭血圧」の2種類があります。診察室血圧は、緊張などの影響で家庭血圧よりも高めに出やすい傾向があります。

  • 診察室血圧:収縮期血圧140mmHg以上、あるいは拡張期血圧90mmHg以上
  • 家庭血圧:収縮期血圧135mmHg以上、あるいは拡張期血圧85mmHg以上

上記に該当する場合、一般的に高血圧と診断されます。

高血圧治療のガイドラインについて

高血圧が持続すると、血管壁に過度な圧力がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞などの申告な疾患を引き起こすほか、全身の末梢血管にも影響を及ぼすため、適切な管理が重要です。日本高血圧学会が発行する「高血圧治療ガイドライン2019」では、患者様の状態に応じた血圧コントロールの目標値を設定しています。

  診察室血圧 家庭血圧
75歳未満の成人
脳血管障害のある方
冠動脈疾患のある方
慢性腎臓病(CKD)患者(たんぱく尿陽性)糖尿病患者
抗血栓薬を服用中の方
130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
75歳以上の高齢者
脳血管障害のある方
慢性腎臓病(CKD)患者(たんぱく尿陽性)
140/90mmHg未満 135/85mmHg未満

(出所)日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」53ページ表3-3
(注)ガイドラインには、さらに詳細な目標調整に関する注記がありますが、ここでは省略しています。

高血圧の治療

本態性高血圧症の場合は、食事習慣の改善や運動療法といった生活習慣の改善と必要に応じて薬物療法を行います。二次性高血圧症の場合は、原因となっている疾患の治療を優先的に行います。生活習慣の改善は、患者様1人ひとりのライフスタイルに合わせて、無理なく継続できる方法を医師と相談しながら見つけていくことが大切です。

生活習慣の改善

塩分制限

日本人の食生活は、味噌、醤油などの調味料や塩分の多い漬物に加え、ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉食品やインスタント食品の摂取が増えたことで、塩分過多の傾向にあります。
健康な食生活を送るためには、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。加工食品には必ず成分表示がありますので、食塩相当量を計算して使用量を調整したり、味噌、醤油、出汁などを減塩タイプのものに置き換えたりするなどの工夫が必要です。
減塩食は味が薄いと思われがちですが、出汁をしっかりとる、スパイスを効果的に使うなどで、美味しく召し上がれます。

ダイエット・肥満予防

ダイエット・肥満予防
健康を維持するために、身長から算出される適正体重を把握することが大切です。適正体重から大きく外れる場合は、様々な疾患のリスクが高まります。適正体重を算出するには、まず体格指数(BMI)を計算します。

BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割ることで求められます。適正体重は、BMIが22.0となる体重です。BMIが18.5未満の場合は低体重、18.5以上25.0未満の場合は普通体重、25.0以上の場合は肥満と判定されます。
標準体重を維持することは、疾患のリスクを軽減する上で非常に重要です。特に肥満の方は、生活習慣病を発症しやすい傾向にあるため、健康的な減量に取り組むことをお勧めします。ただし、急激なダイエットは、貧血や生理不順などの健康被害を引き起こす可能性があり、リバウンドのリスクも高いです。
健康的な体重を維持するために、無理のないカロリー制限と適度な運動を組み合わせ、徐々に体重を減らしていきましょう。

減酒・禁酒

1日あたりの純アルコール摂取量は20g以下に抑えることが推奨されています。ただし、女性は男性に比べてアルコールの分解速度が遅く、影響を受けやすいため、10g以下を目安とすることが望ましいです。純アルコール20gは、ビール500mL、日本酒1合
(180mL)、ワイングラス2杯 (200mL)、ウイスキーダブル1杯 (60mL) に相当します。

運動

運動
定期的な運動は、体重管理に役立つだけでなく、血流を促進し、血管の健康を維持する上でも重要です。激しい運動を行う必要はなく、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動と、スクワットや腕立て伏せなどの筋力トレーニングを組み合わせ、軽く汗ばむ程度の運動を継続することをお勧めします。
ただし、疾患によっては運動が推奨されない場合もありますので、運動を開始する前に必ず主治医に相談してください。

禁煙

喫煙は、血管を収縮させるニコチンの作用により、血圧上昇や動脈硬化を促進します。そのため禁煙は、食事療法や運動療法の効果を高め、他の疾患の発症や重症化を予防することにも繋がります。